こんにちは。花祭窯おかみ・ふじゆりです。
少し前のこと、お世話になっているギャラリーさんから「雑誌取材用に、お正月にふさわしい器をいくつかご用意いただけませんか」と相談がありました。今年ももうそんな時期なのだなぁ、としみじみ。ちょうど窯から上がった新作に、華やかなものがありましたので、いくつか見繕ってお送りすることに。昨今はお正月の過ごし方も人それぞれですから、お正月=お節料理=重箱だけではありません。少し広げて「年末年始の食卓」と考えると、さらにイメージが膨らみます。
そこで本日は、もし年末年始用の器を買うとしたら「これがあると便利!」をご紹介。
1)華やかな大皿か大鉢をひとつ。
テーブルの真ん中にドンと置くだけでご馳走感の出る大皿や大鉢。少々派手なものも、料理を盛れば丁度よくなります。手料理はもちろん出来合いのお総菜も、存在感のある器に盛り替えるだけで見映えもばっちり。
2)小皿・豆皿を、いろいろいくつか。
お惣菜でも珍味でもお菓子でも、さまざまな形の小皿豆皿に入れて折敷(トレー)や重箱に並べて出せば、それだけで料理屋さんのような雰囲気になります。瓶詰の珍味やお漬物なども、小皿豆皿使いで立派な一品に。
3)品の良い取り皿をお揃いで。
手元で使うお皿にこそ、品の良いものを。「品の良い」は見た目だけでなく、持ったときの感覚も含めます。取り皿は手に持って使うことを想定し、できれば実際に手に取って選ぶことをおススメします。
いずれにしても「自分自身が気に入ったもの」をお買い求めになるのが一番。使うたびに笑顔になるような器との出会いがあると、嬉しいですね。
<日常の禅語>一(いち)
「本来無一物」「一期一会」「一華開五葉」「一掃除二信心」「一日不作一日不食」…禅語には「一」がよく出てきます。お茶席の床の間に「一」ひと文字の掛け軸を見ることも。
「一」は数字の「1」であり、「原因(はじまり)」の意味があります。原因の「一」から、二、三、四…と生まれてくるのが「現象」。現象は変化し続け、流れ続けて最終的に「一」に戻りますが、そのときには最初の「一」とは別の一になっています。そしてまた一(原因)から二、三、四…と現象が生まれ変化し流れ、を繰り返します。それが輪廻であり、宇宙の創造と破壊の理(ことわり)だと。
話が壮大になってきたところで、似たようなストーリーを思い出しました。「行く川の流れは絶えずして しかももとの水にあらず」。世の無常・変転を説いた古典、鴨長明『方丈記』の冒頭の一節です。流れる川の水のイメージを、変化し続ける現象と結びつけて考えると、なんとなく理解できるような気がいたします。
ところで『方丈記』の冒頭の一節は、昨今「どんなに停滞しているように感じているときでも、必ず流れているのだから、心配しないでいいのだよ」とポジティブな解釈で引用されることもあるようです。解釈も時代により、ですね。
花祭窯おかみ・ふじゆり(藤吉有里)
「古伊万里」の名で知られる肥前磁器の伝統工芸文化、技術を基にした窯元「花祭窯」のお内儀。おかみとして窯を支えつつ、自らもアートエデュケーターとしてMeet Me at Artを主宰する。
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