こんにちは。花祭窯おかみ・ふじゆりです。
文化の秋。前回は「文化的芸術的な体験の機会を日常に」というお話でした。今回は、そのような機会で「より感受性を磨き、世界観を広げていくための美術鑑賞方法」をご紹介。
感受性を磨く美術鑑賞の第一歩は「自分の目で見る」ことです。絵や彫刻などの美術作品そのものを見て「何が見えるか(目)」に集中すること。作家や作品にまつわる知識(=文字情報)は一切排除し、純粋に「何が見えるか」を受け取ることが大切です。次に「何が見えるか/どう見えるか」を自分の言葉で文字情報に置き換え、最後に「それはなぜだと思うか(意味)」を導き出します。このように「作品」と「作品を観るわたし」とが一対一で向き合う方法を、「対話型美術鑑賞法」と呼んだりします。この鑑賞法を繰り返すことで、自分の目で見る力がつき、自分の世界観が次第にはっきりしてきます。
せっかくなので、ちょっとここで試してみましょう。
「何が見えますか?」「どう見えますか?」「それはなぜだと思いますか?」
それぞれの問いに対する答えを、書き出して(あるいは口に出して)みてください。
「1.見る(受け取る)→2.言葉に置き換える→3.意味を導く」。最初の「見る」だけでも、漠然と見ることとの違いを感じるのではないでしょうか。言葉に置き換え、導かれた意味は、あなた自身の世界観(=価値観/美意識)をベースにしたものです。自分の世界観が見えてくるほどに「同じものを見ても、受け取り方は人それぞれ違う」ことを、体感的に理解できるようになります。そして違いを受け入れることは、世界観を広げていくことにつながります。
気になる絵を見つけたら、ぜひ試してみてくださいね!
諸悪幕作 衆善奉行 (しょあくまくさ しゅぜんぶぎょう))
「悪いことはしないで、善い行いをしましょう」というほどの意味です。当たり前のことに聞こえます。でも、日々実践できているかと問われたら、わたしは即座には返事が出来ませんでした。
ある法要の席でのこと、お坊様が「お釈迦様の教えは本来シンプルでわかりやすいもの」と教えてくださいました。「悪いことはしないで、善い行いをしましょう」も、言葉通り。自分にできる小さなことから、日々善い行いを積み重ねていけばよいと。大げさに考えなくても、例えばあいさつする、靴を揃える、ゴミを拾う…ふだんから自然にできることはたくさんありそうですね。
当たり前に聞こえる教えも、ときに自問してみると意識が新たになります。
花祭窯おかみ・ふじゆり(藤吉有里)
「古伊万里」の名で知られる肥前磁器の伝統工芸文化、技術を基にした窯元「花祭窯」のお内儀。おかみとして窯を支えつつ、自らもアートエデュケーターとしてMeet Me at Artを主宰する。
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