こんにちは。花祭窯おかみ・ふじゆりです。
師走ですね。2020年はここ数年で最も本を読んだ年になりそうです。1年を振り返る前に、今年上半期の「ふじゆり的ベスト5」をご紹介♪
第5位 『新・リア王』(新潮社)高村薫。
『晴子情歌』に続く上下巻。日本現代史を垣間見、現在の政治や地方の問題の根深さを考えさせられました。
第4位 『三銃士』(角川文庫)アレクサンドル・デュマ。
1600年代フランス。時間と空間を軽々と超える読書の楽しみ。登場人物の個性が魅力的です。
第3位 『森美術館のSNSマーケティング戦略 シェアする美術』(翔泳社) 森美術館広報・プロモーション担当 洞田貫晋一朗。
SNSの「中の人」のお話。「文化や芸術は、経済より上にあるべきもの」の言葉に大きくうなずきました。
第2位 『アンナ・カレーニナ』(新潮文庫)トルストイ。
1870年代ロシア。登場人物の「ダメなところ」に共感しつつ、描かれる心の機微に感動しました。
第1位 『7つの階級 英国階級調査報告』(東洋経済新報社)マイク・サヴィジ著、舩山むつみ訳。
資本主義の先に生じた階級格差の問題。日本の現状にも照らして考えるべき、問題提起の本です。
古典の名作が2冊に、日本の現代小説、ビジネス本、論文と、今回も多様な顔ぶれとなりました。読書は気の向くままに楽しむものですね。
<日常の禅語>
春は花 夏ほととぎす 秋は月 冬雪さえて冷(すず)しかりけり
日本曹洞宗の祖・道元禅師が詠んだ和歌です。
季節の美しさを詠んだ歌は、実は「ありのままを素直に見ること」の難しさを伝えています。ただ季節は流れ、現象は流れていくのだから、特別なことは何も言わない(言う必要が無い)という教えです。
この歌を詠むと、初めての茶会亭主に備えて特訓をしていた数年前を思い出します。お稽古中「お作法を間違えないよう」と力むほどに、無駄な動きが増えるわたし。先生から「ずいぶん複雑なお点前をしているねぇ」と笑われ、「ほら、難しいことは何にもしていないよ」とお手本を見せていただくたびに、「見たままに真似る」のを思考が邪魔していることに気づかされました。頭で考えているうちは、うまくいかないのです。ものごとを複雑にしているのは、それを見る「わたし」の雑念や思惟なのですね。
花祭窯おかみ・ふじゆり(藤吉有里)
「古伊万里」の名で知られる肥前磁器の伝統工芸文化、技術を基にした窯元「花祭窯」のお内儀。おかみとして窯を支えつつ、自らもアートエデュケーターとしてMeet Me at Artを主宰する。
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