【医師監修】あなたの便秘が解消されない7つの理由


監修医師

白金台おがわクリニック院長  小川惇郎

日本糖尿病学会糖尿病専門医、日本内科学会総合内科専門医、日本内分泌学会内分泌代謝科専門医、日本抗加齢医学会抗加齢医学専門医

 

【理由1】えっ?便秘茶って下剤なの?

◆ 便秘茶って下剤なの? 便秘茶でさらにひどい便秘になるって本当!?

便秘茶の副作用として、自然な便意を感じにくい体質になってしまうことを知っていますか。センナ、キャンドルブッシュ、ゴールデンキャンドルなどの「下剤成分」が含まれている便秘茶を飲み続けていると、その下剤の刺激に腸が慣れてしまい、だんだんと効果が薄れてきます。

飲む量を増やせばまた便意を感じるようにはなりますが、その刺激にも腸が慣れてしまい、ますます飲む量を増やさなければならないという悪循環に陥ります。飲み続けるほど、排便が難しくなるのです。腸のぜん動運動の低下は便秘を悪化させる原因のひとつです。

◆ 体臭や口臭の原因にも

下剤系の便秘茶の便の状態は、消化不良(下痢)が多く、お腹が痛くなるのはもちろん、大腸に大きなダメージをあたえます。下痢が続くと腸からの栄養の吸収が妨げられますので、栄養不足になり美容と健康を損ないます。

それだけでなく、腸内で有益なはたらきをする善玉菌がすみにくい環境となり、悪玉菌がふえる原因にもなります。悪玉菌は腸内で有毒なガスを発生させ、体臭や口臭の原因になるだけでなく、腸内環境を悪化させ便秘の原因を作ります。

お通じはあるけどいつも下痢気味。疲れやすく顔色がすぐれない、ヤセ型なのに下腹はポッコリ。おならが異様に臭く、口臭が気になる。思い当たることがあれば、便秘茶の常用による体調不良を疑いましょう。

◆ 商品を選ぶ基準

安全な商品を選ぶ基準は、「下剤成分」を使用していないことです。
下剤成分を使用しているものは「※妊娠中・授乳中の飲用はお控えください」と記載されていることが多いようです。
妊婦の身体はとてもデリケートですので赤ちゃんに何かしらの影響があると困りますよね。だから妊婦さんに飲んでもらったら困るのです。逆にいえば、妊娠中でも安心して飲めるものはそれだけ安全なものと言えるでしょう。

便秘茶の中には、センナ系の下剤成分がはいっているお茶もあるので選ぶときは慎重に。→センナの怖さはこちら
ダイエットのために軽い気持ちで飲みはじめて、飲まないと排便できない体質を自ら作ってしまう女性たちが後を絶ちません。自然な便意を失った腸を元の状態に戻すのは、一筋縄ではいきません。
下剤系の便秘茶には副作用があることを念頭に置いて、下剤成分を使わない方法で健康的なからだを目指しましょう。

キャンドルブッシュを含む健康茶ー下剤成分(センノシド)を含むために過剰摂取に注意ーというレポートが、国民生活センターにより公表されていますので、参考にしてください。
キャンドルブッシュを含む健康茶ー下剤成分(センノシド)を含むために過剰摂取に注意ー (国民生活センター)

【理由2】腸内洗浄って本当のところ、どうなの?

◆ 腸内洗浄で免疫力が下がる!?

腸内洗浄とは、腸に水やコーヒーなどを注入して便を洗い出す方法です。民間療法などに使われています。腸内洗浄をして、きれいさっぱり便を洗い流す!さぞ、気持ちのよいことでしょう。ただ、日常的に行うのはあまりおすすめできません。

準備に時間がかかり、排便するためだけに人生の貴重な時間つかいすぎるのは本当にもったいないことです。自然に排便できるようになればそれに越したことはないのです。しかも便だけでなく、からだに必要なものまで流れ出てしまうとしたら…?

じつはこの腸内洗浄。腸内環境を守るため大切なはたらきをする「腸内細菌」まで、便と一緒に排出してしまうのです。つまり腸の中が本当にカラッポになってしまうんですね。問題はその後です。毎日のように腸内の菌を洗い出していたら、いつまでたっても善玉菌がすみつきませんし、善玉菌あっての免疫力が低下してしまう可能性も否定できません。

また悪玉菌がふえやすい環境なります。なぜでしょう?宿敵「善玉菌」がいないので、悪玉菌はものすごい勢いで増えはじめるのです。腸内環境が乱れると、免疫力が一気に低下し、感染症やガンの原因になるとも言われています。

◆ 自然な便意がなくなってしまうことも…!

便秘を根本的に解消するためには、自然な便意を取り戻すことです。腸内洗浄を繰り返しおこなっていると、その自然な便意がなくなってしまうこともあります。自然に排便できたら、それに越したことはないですよね。

最後に注意点ですが、高齢者や腎臓の機能が弱っているかたは、むくみを引き起こしたり、心臓によけいな負担がかかったりする場合があるので注意してください。また、腸の手術をしたことがあるかたも厳禁です。

【理由3】便秘と下痢を繰り返すのはどうして?

 

◆ 女性に増えているストレス腸

「便秘が治ったと思ったら今度は下痢に。とりあえず、便秘解消できた?」
いえいえ、どちらも便通異常には変わりありません。便秘が治ってようやく排便できたかと思えば、ひどい下痢だったり「コロコロ」したウサギの糞みたいな便が出たり、残便感を感じることはありませんか。

これは『過敏性腸症候群』と呼ばれている症状で、若い女性を中心に急激に増えています。原因は主に精神的なストレスです。緊張するとお腹が痛くなりますよね。腸と心理状態は密接につながっていて、ストレスを感じると腸にかなりのダメージをあたえてしまうのです。

 

 

 

◆社会問題になりつつある過敏性腸症候群(IBS)

過敏性腸症候群(IBS)とは、腸内に炎症や潰瘍などの異常がないのにもかかわらず、腹痛、お腹の不快感、下痢や便秘などの排便異常が長期間続く病気です。症状によって「下痢型」 「便秘型」 「交代型」があります。とくに下痢型は男性に多い傾向にあります。この症状の特徴は、1日に何度もトイレに行ったり、ひどい人になると電車に乗っても各駅停車のたびにトイレに駆け込むという厳しい生活を強いられています。仕事中もトイレばかり、仕事は集中できないでは、企業にとって大きなダメージになってしまいます。

先進国アメリカでは、なんとビジネスパーソンの「お通じ」が社会問題になっています。QOL(Quality Of Life)、言わば生活の質に影響を与えるというのです。通常、トイレは1日1~2回のことが多いのですが、精神的なストレスのために、「下痢が続く」「お腹の不快感はあるけど出ない」「急な腹痛におそわれる」など便通がおかしくなっているビジネスパーソンが増えているというのです。

これは企業だけでなく国全体の損失ということで、アメリカでは現在、国をあげての予防・改善に乗り出しているようです。しかしこれは、何も海の向こうだけの話ではありません。日本も同じ状態になりつつあるのです。

【理由4】食物繊維でお腹が張る、ガスがたまる

◆ お腹が張ってつらくなるのはどうして?

「便秘解消のために、野菜をたくさん食べてるけど、よけいに詰まっちゃう。」

そう感じたことはありませんか?

もしかしたら、間違った食物繊維のとり方をしているのかもしれません。食物繊維なら何でも便秘に良いというのは大間違いです。便秘解消によかれと思ってやっていたことが、かえって便秘をひどくするということもありますので注意してください。

◆便秘に食物繊維は厳禁のなの?

詰まる感じがする原因は、便の材料である不溶性食物繊維をとりすぎた場合です。サツマイモ、ほうれん草、ごぼう、キャベツなどに多く含まれる繊維です。腸のはたらきが弱っているとき、便の材料を送り込めば、便はたまっていく一方。不溶性食物繊維のとりすぎは場合によっては逆効果になるということを覚えておいてくださいね。

そんなときにおすすめなのが水溶性の食物繊維です。腸に有効なはたらきをする「有機酸」を作り出し、腸内を「弱酸性」の状態にして便秘解消に一役買ってくれるのです。
便を強引に押し出す不溶性食物繊維とは違い、自然に腸を刺激して排便をスムーズにしてくれる水溶性食物繊維。この効果は見逃せません。

また、水溶性食物繊維はネバネバした粘度と水分を抱え込む「保水性」をかねています。腸内にたまった老廃物や毒素をはじめ、食事でとった脂肪やコレステロールまでをも排出するという驚くべき効果が確認されています。水溶性食物繊維はけいれん性便秘をはじめ、あらゆるタイプの便秘の特効食品です。腸に負担をかけず、やさしく通過します。

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「便秘解消のため、野菜サラダをたっぷり食べてます」という方へ。

残念ですが、あまり効果的な方法とはいえません。サラダの代表野菜にレタス、きゅうり、トマトなどがありますが、その95%以上は水分です。
しかも食物繊維を含んでいるのは100分の1程度。食物繊維は1日に20g以上とるのが理想なんですが、サラダだけで食物繊維をとるならば、単純に計算しても2kgは食べる必要があります。お腹が破裂しそう……。気の遠くなるような数字ですね。

サラダで食物繊維をとりたいのであれば、ちょっと工夫してみましょう。生ではなくゆでた野菜を利用するのです。ブロッコリーやカリフラワー、いんげん豆などが理想ですね。中でも優秀なのは「豆」です。意外に思われるかもしれませんが、「豆」には便通を良くする食物繊維がたっぷり含まれています。

100gあたりの食物繊維のランキングで上位にくるのは寒天、きくらげ、干しシイタケなのですが、この数字に惑わされてはいけません。そのほとんどが乾物です。水に戻すとかさがふえ、そう多く食べられるものではありません。また、食物繊維のとりすぎは、カルシウムや鉄・亜鉛などからだに必要なミネラルを吸着して排出させてしまいます。あくまでも全体の栄養バランスを考えた上で、1回の食事でどのくらいの量の食物繊維がとれるかを考えることが大切です。

そう考えた場合、豆がいちばん優秀なのです。食物繊維の効用を体内で十分に発揮させるためには食物繊維とともに水分を十分にとることが大切です。ダイエットのために水分を控えるかたがいますが、水分が十分でないとせっかくの食物繊維も生かされません。

最後に、水溶性食物繊維をふんだんに使ったおつうじ屋のオリジナルレシピをクックパッドで紹介しています。ぜひ参考にしてくださいね。
おつうじ屋★便秘解消のキッチン

【理由5】ヨーグルトの乳酸菌ってほんとに効果あるの?

◆ 乳酸菌は腸内をそのままスルー!?

「ヨーグルト。効果がないばかりか、たべすぎて太りました(涙) Mさん」
「乳酸菌をとっても改善される気配なし! Kさん」

こんな声をよく耳にします。
原因はヨーグルトや乳酸菌サプリメントにあるわけではありません。からだの免疫システムです。
乳酸菌は、腸にたどりつく前にほとんど胃酸で殺菌されてしまうんです。運よく腸までたどりついたとしても残念ながら、腸内をスルーしてしまいます。

 

◆ 食べる乳酸菌は育てるのが難しい!?

せっかく腸に送り込んでも生きたまま腸内に届けるのは難しい乳酸菌。
届いたとしても、育てるのはもっと難しい。ヨーグルトを毎日食べましょうといわれているのはそのためで、食べるのをやめると乳酸菌はいずれいなくなってしまいます。

また、毎日同じヨーグルトを食べ続けるのはちょっと大変ですし、乳製品は動物性の脂肪が多いのでカロリーを気にする女性も多いのではないでしょうか。(最近は脂肪ゼロのものも出てますね)

ただし、胃酸などによって死滅した乳酸菌の死骸は、もとからお腹にいる腸内細菌のエサになるので、そういう意味では、便秘解消に効果的です。
ただ、ほかの乳酸菌をお腹で育てる、という観点からは難しいのが現状でしょう。

【理由6】過度なダイエットで便秘になる人が急増中

◆ ご飯を抜くと便秘になる?

ダイエットを始めたとたん、お通じがピタっと止まる。そんな経験はありませんか。
どうしてお通じが悪くなってしまうのでしょう?

たとえばマヨネーズ。たっぷり入っているときは、スムーズに出てくるけど残り少なくなると、出にくくなりますよね。
つまり、量を食べないことで便のボリュームがなくなり、大腸が便を送りだせなくなるんですね。

そんなことを繰り返しているうちに、腸のぜんどう運動が低下、さらに栄養不足による、体力の低下。免疫力の低下。腸内環境の悪化。
アララ…。からだのあちこちに支障が出てきます。

そもそも大腸は、ただ便を作るだけの場所ではありません。
腸内細菌がはたらくことにより、脂肪の吸収をおさえる、脳の神経に作用して食欲を抑えてくれる、といった肥満を防ぐ役目もあるんです。無理なダイエットで腸が弱ると、よけいに太りやすい体質になってしまいます。

◆ 腸をいたわって健康的にダイエット

簡単にダイエットできる方法があります。それは、腸を健康にすること。
腸が健康になれば、「いる・いらない」をしっかり分けてくれるので、太りにくい体質になります。腸を丈夫にして、腸内細菌を元気にするのはご飯です。

ご飯のでんぷんには食物繊維と似たはたらきをするので、便秘解消に効果がありますし、また腹もちもいいので、間食を防ぎます。
脳のエネルギーにもなるので、頭の回転も良くなります。まさにいいことづくめですね。
腸をいたわって、健康的なダイエットを心がけましょう。

【理由7】便秘薬は飲めば飲むほど効かなくなる

◆ 便秘薬で腸がダメになる!?


下剤を気軽な気持ちで飲んでいませんか。からだに良くないと感じながらも、手軽さのために手放せないかたも多いようです。下剤には便をやわらかくする種類(酸化マグネシウム)と大腸を動かすもの(センナなど)があります。とくに気をつけて欲しいのが、大腸を強制的に動かす、刺激系の下剤です。下剤の長期服用の代償は大きく、使い続けていくうちに自力で排便できないからだになってしまいます。

◆ 下剤ダイエット!?

さぼり腸中学生や高校生の間で、下剤ダイエットが流行していますね。若いかただけでなく、成人女性の間でも下剤をダイエット目的で使っているかたはたくさんいます。みなさん、口をそろえて“やめたら太りそうで怖い”と仰います。しかしこれは完全に間違ったダイエット法です。

薬を使って強制的に排便を促してもからだ内の水分や栄養を無理に外に出しているだけで、決して余分な脂肪が落ちたわけではないのです。

 

◆長期服用で腸が真っ黒に!?

漢方便秘薬は、自然でからだに優しそうなイメージですよね。しかし、漢方薬といえど薬は薬。薬には副作用が伴います。
漢方便秘薬の主な成分には大黄(生薬)、センナ、アロエなどがあります。これらの生薬を長い間飲み続けると、大腸メラノーシス(黒皮症)になりやすくなります。つまり、腸が色素沈着を起こして真っ黒になってしまうのです。

原因は、生薬に含まれている化学物質のアンソラシンです。腸が色素沈着を起こしてしまうと、どんなダメージがあるのでしょう。

◆ 長期服用の危険性

腸が色素沈着を起こすと、腸の機能が低下します。腸が本来もっている「自力排便力」がますます弱くなるのです。
漢方便秘薬は、半年以上使用すると色素沈着を起こしやすいと言われていますので、やむを得ず使用する場合は、長期服用にならないように注意してください。
選ぶときは、長期服用や副作用の影響などを、専門医や薬剤師さんによく相談しましょう。

 

監修医師

白金台おがわクリニック院長

小川惇郎(おがわ じゅんろう)

日本糖尿病学会糖尿病専門医、日本内科学会総合内科専門医、日本内分泌学会内分泌代謝科専門医、日本抗加齢医学会抗加齢医学専門医

北里大学医学部卒業後、北里大学内分泌代謝内科へ入局。

平塚共済病院、川崎市立井田病院、北里大メディカルセンターへ出向。

その後、北里大学病院 内分泌代謝内科、NTT東日本関東病院を経て、2017年11月から、白金台おがわクリニック院長を務める。

白金台おがわクリニック:https://shirokanedai-ogawaclinic.com/

 

 


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