こんにちは。花祭窯おかみ&アートエデュケーターふじゆりです。
わたしの仕事場には、ここ数年毎年、仙厓和尚のカレンダーがかかっています。仙厓さんは、江戸時代の禅僧。禅の教えを市井の人々に易しく伝えようと、たくさんの書画を遺しています。おおらかで面白味のある画は当時から大人気だったようで、求める人が多すぎて「断筆宣言」をしたことがあるという逸話が残っているほど。
そんな仙厓作品のコレクターとして有名なのは、出光興産の創業者・出光(いでみつ)佐三(さぞう)翁。カレンダーは、出光美術館のミュージアムショップのグッズとして、毎年制作されているもののひとつです。
ある月のカレンダーで、「丹霞焼仏(たんかしょうぶつ)画賛」の文字と、老僧と子どもが燃え盛る火をはさんで向かい合う様子が描かれていました。禅宗画の有名な画題だそうで、「若言焼仏 堕落眉鬚(焼仏というがごとく、眉鬚堕落す)」と解説が添えられています。唐の僧・丹霞(たんか)が寒いなか暖をとろうと木像(仏像)を焼いてしまったのを見て、寺の執事が咎め糾弾したところ、その執事の眉やひげが抜け落ちた、というお話。
その心は、大切な仏像とはいえ、見方を変えればただの「木」なのだから、そのときどきで偶像崇拝よりももっと大切なことがありますよ(この場合は寒さをしのぐこと)ということのようです。
ルールや思い込みにとらわれず、状況に応じて優先されるべき行動があるということですね。非常時・緊急時には、特にそうだと思います。「大切なのは何か」。本質を見失わないようにすることの大切さが伝わってきます。
カレンダーの画では、火に手をかざして暖を取る若い僧侶の落ち着いた姿に対して、火を消そうと躍起になっている老僧の姿が滑稽に描かれています。このような画を観れば、面白がりながらその教えを覚えることができそう。画の果たす役割・力を感じる一枚です。
縞馬陶板 藤吉憲典作
花祭窯おかみ・ふじゆり(藤吉有里)
「古伊万里」の名で知られる肥前磁器の伝統工芸文化、技術を基にした窯元「花祭窯」のお内儀。おかみとして窯を支えつつ、自らもアートエデュケーターとしてMeet Me at Artを主宰する。
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