こんにちは。花祭窯おかみ&アートエデュケーターのふじゆりです。
月に二回、禅寺にお茶の稽古に通っています。八月は暑いのと、お寺が法要でご多忙なのとで、お稽古は夏休み。九月から再開です。
まずは日本最初の禅寺と言われる博多聖福寺での、献茶式のお手伝いから。献茶(けんちゃ)とは、神仏や故人の御霊にお茶をお供えする儀式です。聖福寺の開祖・栄西禅師は、日本に茶をもたらしたと言われており、毎年命日のある九月に献茶供養が行われます。
献茶のお点前がはじまると同時に、お坊様による読経もスタート。
十人以上ものお坊様が連なって、お経を唱えながら仏殿内を回遊します。何重もの声が音の塊になって体全体に響いてくる様は、さながらお経のシャワー。異次元空間に迷い込んだ気分になります。
ぐるぐると繰り返されるお坊様の動きを眺め、その間唱え続けられるお経を聴くこと凡そ一時間。気がつけば頭のなかが空っぽになっています。もう少し格好つけて言えば、ざわざわしていた頭と気持ちが、落ち着いて穏やかになっているという感じ。正直、お経で唱えられている内容はよくわかりませんし、そもそもちゃんと聞き取れもしません。にも関わらず、繰り返される動きと音に五感を委ねた結果、心が安らぐのです。
実は似たような効果が、やきもの(陶磁器)の文様にもあります。こちらは視覚へのアプローチになりますが、例えば、唐草文様。同じパターンが繰り返され、終わりなく続いているように見えます。この文様を、直感的・無意識的に選ぶ方はとても多く、人気文様のひとつです。時代を遡れば、シルクロードや仏教伝来の昔から人々に愛されてきた文様でもあり、古今東西の人々が、唐草文様に長寿や繁栄の願いを重ねてきました。
音でも動きでも文様でも、繰り返されるパターンに心の安寧を見出すのは、時代も文化も超えた共通のものなのかもしれませんね。
花祭窯おかみ・ふじゆり(藤吉有里)
「古伊万里」の名で知られる肥前磁器の伝統工芸文化、技術を基にした窯元「花祭窯」のお内儀。おかみとして窯を支えつつ、自らもアートエデュケーターとしてMeet Me at Artを主宰する。
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